近く「培養肉」がレストランなどで食べられる日がやってくるかもしれない。
培養肉とは、細胞培養によって作られる牛肉などの代替肉の1種で、現在世界各地で研究開発が行われている。これまで培養肉はコストや安全性への懸念から市場流通の実現は難しいとされていたが、最近になって培養肉の販売実現に向けた動きが進みつつある。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は2022年11月、米国内で販売の準備が進められている「培養鶏肉」について、安全性に問題がない旨を確認する評価報告を公表した。もっとも、この当局の判断によって直ちに米国内で培養肉の販売が開始されることはないが、巨大な市場を抱える米国で販売が始まれば、培養肉が我々の食卓に身近な存在となる日が近づくことになるだろう。
では、そもそも培養肉とは一体どのようなもので、世界では今どこまで研究開発が進んでいるのだろうか。そして、培養肉は今後、日本でも我々に身近な「食材」となるのだろうか。
培養肉とは何か?
まず、培養肉とは何かについて確認しておこう。
培養肉とは、生きている動物から採取した細胞を人工的に培養させ、増殖した細胞を肉の形に成形した食品だ。具体的には、まず牛や鶏などから幹細胞が採取され、それらがバイオリアクターと呼ばれる大型タンクのなかで細胞培養液を使って培養される。細胞が培養されると、次は可食の細胞足場と呼ばれる土台を使って細胞が組織化される。つまり、細胞が筋肉状に成形されるのだ。そして、ある程度まで筋肉が成長すれば「肉」として出荷される。
培養肉は、牛や鶏はもちろん、魚などでも開発が進んでいる。以下、それぞれのタイプについて、代表的なメーカーを紹介していこう。
牛肉タイプ
まず、牛肉タイプの培養肉の研究開発で世界的に知られているのが、イスラエルに拠点を置くAleph Farms(アレフ・ファームズ)だ。
2016年に創業した同社は、牛肉ステーキタイプの培養肉の開発に取り組んでおり、2020年12月にはイスラエルのネタニヤフ首相(当時)が同社の培養肉を試食したことが話題となった。
Aleph Farms(同社HPより)
鶏肉タイプ
鶏肉タイプの培養肉メーカーとしては共に米国に拠点を置く2社を紹介したい。