Elon Musk(Daniel Oberhaus, CC BY 2.0) , Illustration by The HEADLINE

ブラジル、X に禁止命令 = 民主主義国家で続く異例の措置は何を示唆しているのか?

公開日 2024年09月04日 19:44,

更新日 2024年09月04日 19:45,

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この記事のまとめ
💡ブラジルで X に禁止命令

⏩ 民主主義国家によるSNS禁止という異例措置、アクセスには1日130万円の罰金も
⏩ 命令の判事「マスク氏は超国家的な存在ではない」
⏩ 他国の追随が見られるかも今後の焦点に

2024年8月30日(現地時間)、ブラジルの最高裁判所判事は、イーロン・マスク氏の所有するソーシャルメディア・X について、同国でのサービス停止を命じた。9月2日には、他の判事5名が一致して、その命令を支持した。

このニュースは、ソーシャルメディアが(権威主義国家だけでなく)民主主義国家でも禁じられる余地があることを示したという意味で重要であり、異例でもある(*1)

判決文では、X が「2024年の地方選挙を含め、ブラジルのソーシャルネットワークにおける完全な免責と無法の環境」に貢献しており、同社は繰り返し意図的に裁判所命令を無視してきたとされた(太字は引用者による、以下同様)

本決定の異例さは、罰則規定にも現れている。現在、ブラジル国内で VPN(仮想プライベートネットワーク)を利用して X にアクセスした場合、1日あたり5万レアル(約130万円)の罰金が科される可能性がある。これは、中国やロシアなどの権威主義国家では一般的だが、表現の自由を重視する民主主義国家ではきわめて珍しい規定だ。

X の禁止措置を受けて、マスク氏は「言論の自由は民主主義の基盤であり、ブラジルの選挙で選ばれていない偽の裁判官が、政治的な目的でそれを破壊」したと述べた

2,000万人を超えるユーザーを抱える国家による X の禁止は、ソーシャルメディアやその所有者たちにとって何を意味しているのだろうか。

(*1)ブラジルは1985年に21年間続いた軍事独裁政権から脱却し、市民の自由や権利を保護する制度を整えた民主主義国家であると理解されている。国際NGO・Freedom House も、「政治的な二極化が見られる」ものの「ブラジルは競争的な選挙が行われる民主主義国家」だとしている

X の禁止措置に至る経緯

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✍🏻 著者
シニアリサーチャー
早稲田大学政治学研究科修士課程修了。関心領域は、政治哲学・西洋政治思想史・倫理学など。
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