パンデミックによって侵害される女性のリプロダクティブ・ヘルス・ライツ。セックスや出生数にも変化

社会問題・人権・環境

公開日 2020/07/20 09:31,

更新日 2020/07/20 14:57

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毎年7月11日は世界人口デーであり、1989年に国際連合開発計画が制定して以降、世界の人口問題についての意識を高めるきっかけとなってきた。2020年は新型コロナウィルス感染拡大による外出自粛や移動制限、人同士の直接的な身体接触の回避などによって、性行動に変化が生じた。この結果、人口動態にも世界的な影響が表れたと考えられている。

新型コロナウィルスの感染拡大は、性行動や人口動態に具体的にどのような影響を及ぼしたのだろうか。そして、新型コロナウィルスの感染拡大による性行動や人口動態への影響は、一体何を意味しているのだろうか。

パンデミック下での性的行動

キンゼイ研究所によれば、調査参加者の半数以上でパンデミックによるストレスとソーシャル・ディスタンスの確保により、性行為の回数の減少や性生活の減退が起こっている。しかし一方、調査参加者のうち17%が、パンデミック以降に1つ以上の新しい試みを性生活に取り入れている。パンデミックは人々の性的行動を減退させつつも、性生活内のバリエーションや積極性を呼び込む両義性を持っていると言えるだろう。このため、特に若年層や単身者、寂しさを感じる人、新しい刺激を求める人にとって、パンデミック下での性的欲求の解消は課題となっている。

外出や移動、身体接触が制限される中、性的行動は新たなバリエーションを持ち始めている。例えば、性的な内容のメッセージをやり取りする「セクスティング」やヌードの送信、ビデオチャットの開始などが試みられ、InstagramのグループDMなどを通じてプライベートに性的なやりとりをおこなう人々もいる。また、マッチングアプリのTinderは成長鈍化を受けて、ビデオデート機能の導入を検討している。

感染リスクのある身体接触を避けて、性的欲求の解消のオルタナティブを求める人も増えている。例えば、AI搭載のセックスロボットラブドールアダルトグッズの売り上げが、パートナーのいない孤独な独身男性だけでなく、カップルや障害者などにも広がって上昇するなど、性に関する特定の市場は活性化している。

かたや先述の通り、性的行動を全くしない人も増加している。コンドームの世界シェア25%を占めるDurex社によれば、パンデミック以降のコンドームの売り上げが減少しており、原因として身体接触を伴う親密な機会の減少が挙げられている。4月時点から、新たな出会いだけでなく、交際中のカップルや既婚者の間でもセックスの機会が減っていると見られていたことから、身体接触による感染リスクへの意識は、相当程度高まっていることがうかがわれる。

では、身体接触を伴う性的行動の減少はどのように人口動態に影響を及ぼしているのだろうか。

欧米圏での出生数・出生率の低下

性的行動が減少すれば、人口動態にも影響が出ることとなる。例えばアメリカでは、コロナの影響で出生数が30〜50万人低下すると予想されている。またオーストラリアでは、パブやバーなど出会いの場が制限されたことや失業リスクの高まりを受けて、出生率が減少していることが指摘されている。

一方、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリスでおこなわれた調査では、パンデミックによるベビーブームを否定しつつ、むしろヨーロッパ全体では不況による貧困やロックダウンによる保育先の制限により、もともと低下傾向にあった出生率がさらに下がる可能性を示唆している。実際、スイスでは妊娠検査薬の販売数や妊娠中のケアに関する病院への問合せが急増しており、パンデミック下での妊娠に対するストレスや不安の高まりが報じられており、先行きの見えない不安が出生率にネガティブな影響を与えるという予測がある。

このように、欧米圏では身体接触を伴う性的行動の忌避もさることながら、先行きの見えない社会状況での妊娠を避ける行動が予想されることで、出生数・出生率が低下する見込みとなっている。

では、欧米圏以外の人口動態への影響はどうなっているのだろうか。

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著者
早稲田大学文学部卒業後、一橋大学大学院にて修士号(社会学)取得。現在、同大学院博士後期課程に在籍中。専門は社会調査・ジェンダー研究。Twitter : @keity_lied
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