ポルノにおけるディープフェイクの増加。何が起き、何が問題か

公開日 2020年09月05日 17:35,

更新日 2020年09月05日 17:35,

有料記事 / テクノロジー

新技術はしばしばポルノによって進歩することが指摘されているが、AIによるディープラーニングと画像・映像合成技術もその例に漏れない。

2017年以降、出演者の同意を得ていないディープフェイクを用いたポルノ動画(以下、ディープフェイク・ポルノ)がポルノサイトやSNSにおいて大量に出回っている。過去にはスカーレット・ヨハンソンクリスティン・ベル、ガル・ガドット、エマ・ワトソン、キム・カーダシアンなど、数々の有名人を素材としたディープフェイク・ポルノが公開された。

こうした状況を受けて、RedditやTwitterは性的に露骨なディープフェイクを禁止する措置をとっている。 しかし、ポルノサイトでは依然としてディープフェイク・ポルノが公開され続け、何百万回もの視聴回数によってサイトの広告収入を稼ぎ出している。特に大手ポルノサイトであるXVideosやPornHub、Xnxx、xHamsterはウェブ全体で見ても世界トップ20に入るアクセス数を誇り、WikipediaやAmazonに並ぶ訪問者がいる。このうちPornhubは同意のないコンテンツを規約で禁止しているため、リベンジポルノやディープフェイクの公開は違反行為となっている

ディープフェイク・ポルノの問題とは一体なんなのだろうか。技術をめぐる法規制の観点から見てみよう。

ポルノのアマチュア化とSNS利用

ディープフェイク・ポルノの出現やその問題の背景を知るために、まずはポルノをめぐる現状を概観することとしたい。

まず、何より重要な変化は、ポルノコンテンツの視聴がオンラインに移行したことである。2010年前後から、ポルノコンテンツをアップロード可能なサイトが多数出現し、ユーザーは無料でポルノを視聴可能となった。先述の大手ポルノサイトはこうしたコンテンツアップロード型のサイトとなっている。これにより、従来ポルノ制作に携わっていたプロだけでなく、アマチュアやインディースタジオポルノの参入が急増した。 ポルノコンテンツ視聴のオンライン化に伴って無料コンテンツが急増した結果、有料ポルノを利用するユーザーが減少し、少ないパイを奪い合う競争が激化した。

こうした競争を生き残るため、ポルノスターがSNSを活用する時代が到来した。海外のポルノスターはもちろん、日本のAV女優もInstagramやTwitter、YouTubeなどを通じてファンとの交流を図っている。また、こうしたSNSが収入源につながるケースも出現している。

かつてポルノ女優として制作会社と契約したこともあるレナ・ザ・プラグは、現在の主たる収入源がSnapchatやアダルト系サブスクリプションサービス「OnlyFans」といった、有料メンバーシップにおけるコンテンツ配信であると語っている。彼女のように、従来とは異なる形でファン層を集め、有料メンバーシップへと誘導するビジネスモデルをとるポルノスターは増えつつある。


Twitterでファンと交流するレナ・ザ・プラグ

ただし、InstagramやFacebookはヌードや性的なやりとりを厳しく検閲しており、セクシャルマイノリティに寛容とされてきたTumblrが2018年からアダルトコンテンツを禁止する一方、性的にオープンなコミュニティがTikTok内に誕生するなど、プラットフォームやその利用方法は規制にあわせて変遷している。

一方、こうしたSNSやサブスクリプションサービスについて、性産業従事者以外の女性の参加をめぐる議論がわき起こるケースもある。2020年8月19日、女優のベラ・ソーンがOnlyFansでアカウントを作成し、サイトがクラッシュするほどのアクセスを集め、1週間足らずで200万ドルを稼ぎ出した。この結果、OnlyFans側がクリエイター側の受け取れる金額や収益の現金化に関する規約改定をおこなったため、ポルノ女優やストリッパーなどのセックスワーカーから激しい批判を受け、謝罪することとなった。

ベラ・ソーンのケースは映画撮影に向けたリサーチだったことが暴露されたが、ラッパーのカーディ・Bがファンとの交流目的でOnlyFansのアカウントを開設するなど、課金ファン層の獲得をめぐる競争は性産業にとどまらない広がりを見せている。

技術革新と廉価化

技術革新とその廉価化も、ディープフェイクの量的増加を後押ししている。かつてはプログラミング技術やPC環境が必要とされたディープフェイクは、無料で利用できるツールの広がりによって容易に制作可能となった。セキュリティ研究者がオープンソースソフトウェアを用いて、わずか100ドル足らずでトム・ハンクスのビデオとオーディオを作成した事例もあるほど、安価で簡単なのである。

この結果、ポルノのアマチュア化と相まって、例えば高校のクラスメイトのような一般人がディープフェイク・ポルノの標的にされてしまう事態が起こっている。

ここまで、ポルノの現状を簡単に紹介したが、ディープフェイク・ポルノの文脈で重要なのはアマチュアおよび作品の増加である。従来、プロによる制作物だったポルノの領域にアマチュアが容易に参加可能になり、作品を発信するチャンネルも、ポルノサイトやSNSなど多様化してきた。 加えて、有名人のディープフェイク・ポルノはユーザーの検索数が非常に多く、ポルノサイト側も広告収入につながるためか、規約違反でも放置しているケースが多い。ディープフェイク・ポルノの広がりの背景には、こうした現状がある。

では、ディープフェイクはどのような問題として取り上げられてきたのだろうか。

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著者
法政大学ほか非常勤講師
早稲田大学文学部卒業後、一橋大学大学院修士課程にて修士号、同大学院博士後期課程で博士号(社会学)を取得。専門は社会調査・ジェンダー研究。
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