衝撃の「フィンセン文書」とは何か?東京五輪も関与、日本の金融機関の名前も

公開日 2020年09月21日 20:28,

更新日 2020年09月21日 20:38,

有料記事 / 政治・国際関係

英・香港上海銀行(HSBC)や米・JPモルガンなど世界の大手金融機関が、不正資金のマネーロンダリング(資金洗浄)を黙認していたことを示す「フィンセン文書(the FinCEN Files)」が、世界中で一斉に報道された。BuzzFeed Newsや英BBC、日本からは朝日新聞などが参加した国際的なプロジェクトによって明らかになり、大きな衝撃を与えている。

また同プロジェクトに関連して、 国際オリンピック委員会(IOC)の関係者に対して、東京五輪・パラリンピックの招致委員会が委託したコンサルティング企業から約37万ドル(約3700万円)が支払われた記録も明らかとなった。

フィンセン文書とは何であり、何が問題となり、今後何が起きるのだろうか?

フィンセン文書とは何か

最初に一連の文書を入手したBuzzFeed Newsによれば、フィンセン文書は「何千もの”疑わしい活動報告書”と、米国政府の関連文書であり、世界的な金融の腐敗と、その腐敗を可能にしている金融機関、そして金融の繁栄を黙認する政府」についての前例のない記録だ。 

BuzzFeedNewsは、1年以上前にこの文書を入手し、調査報道の国際的なコンソーシアムおよび88か国の100を超えるパートナー報道機関とプロジェクトを立ち上げ、分析をおこなったという。

BBCによれば、「金融機関はこれらの文書で疑わしい取引を報告しているが、文書そのものが犯罪や過失を証明するものではない」。しかし、JPモルガン、HSBC、スタンダードチャータード銀行、ドイツ銀行など世界的な金融機関が、テロリストや不正な富を築く政治家、麻薬王などの疑わしい取引を黙認していた様子が記録されている。

FinCENとは何か

フィンセン文書の「FinCEN」とは、アメリカ財務省の金融犯罪取締ネットワーク(Financial Crimes Enforcement Network)の略称だ。SAR(Suspicious Activity Report、不審なアクティビティに関する報告書)と呼ばれる不審な金融取引に関するレポートを収集し、マネーロンダリングやテロ資金の調達、金融犯罪などを監視する。SARは、銀行の金融犯罪に関する担当者やコンプライアンス担当者などによって作成され、当局に報告される仕組みとなっている。

フィンセン文書は、2121件のSARを中心とした2657件の文書によって成り立っている。こうした記録が公開されたことは殆んどなく、今回は1999年から2017年までの、トランザクション(取引)金額にして2兆ドル以上の大規模な取引記録が含まれる。

何が問題か

フィンセン文書によって、著名な金融機関を通じて、テロリストや犯罪者らの資金が世界中をめぐっていることが示唆された。具体的には、現時点で以下のような問題が指摘されている。

  • HSBCは、ポンジ・スキームによる詐欺師の資金を移動させた。彼らは、その資金によりゴルフコースや邸宅、ダイヤモンド、シエラレオネの鉱業権などを購入していた。
     
  • また同行は、2012年に麻薬密売組織によるマネーロンダリングを指摘され、19億ドルの罰金を科されたが、その後も問題ある顧客から利益を得ていた。 ・スタンダードチャータードは、タリバンの代理人としてマネーロンダリングに携わった企業の資金移動を許可していた。また、米国から制裁が科されているイランについても、制裁を回避した取引を提供していたと見られている。
     
  • JPモルガンは、匿名のオフショア企業からの送金をおこなったが、この企業は米連邦捜査局(FBI)による「10大重要指名手配犯」の1人であるセミオン・モギレヴィッチ容疑者によって経営されていた可能性がある。同容疑者は、ロシア・マフィアのボスとして知られる。 
     
  • バンク・オブ・アメリカやシティバンクなども、スイスに逃亡した政治家の不正な取引を処理していた。
     
  • 英・バークリー銀行は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領の側近の1人アルカディ・ローテンブルクの取引を認めていた。米政府と欧州連合(EU)は、同氏に経済制裁を科しており、取引は禁じられている。
     
  • ドイツ銀行は、2兆ドルの不審な取引のうち1.2兆ドルを占めており、コンプライアンスへの疑念が強まった。 

現時点で、フィンセン文書のすべてが明らかになったわけではなく、今後も様々な事例が指摘される可能性がある。また、こうした不審な取引の中には、すでに報道されており、銀行や犯罪者が処罰されたものも含まれる。

日本の銀行も57にのぼる取引

現時点で、日本の銀行が不審な取引に関与しているかは十分に明らかになっていない。ただし、ICIJ(International Consortium of Investigative Journalists、国際調査報道ジャーナリスト連合)のサイトでは、以下の銀行による取引がSARに記録されていることが確認できる。

続きを読む

この続き: 1,488文字 / 画像0枚

この記事を読むためには、月額980円のメンバーシップに参加するか単体購入が必要です。10日間の無料トライアルで、いますぐ読むことができます。

いますぐ無料トライアル

メンバーシップに関するご質問、決済や支払い方法などについては、「よくある質問」をご覧ください。

著者
編集長
1989年東京都生まれ。2015年、起業した会社を東証一部上場企業に売却後、2020年に本誌立ち上げ。早稲田大学政治学研究科 修士課程修了(政治学)。Abema TV『ABEMAヒルズ』、日テレ系『スッキリ』、現代ビジネス、TBS系『サンデー・ジャポン』などでもニュース解説をおこなう。関心領域は、メディアや政治思想、近代東アジア、テクノロジー時代の倫理と政治など。
最新情報を受け取る

ニュースレターやTwitterをチェックして、最新の記事やニュースを受け取ってください。

おすすめの記事